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2008年04月23日

真心を食べてますか?

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※今回は、ニフティ・デイリーポータルZの「お題DE道場」が「誰かに聞きに行く」だったので、
以前聞きに行ったおむすび屋さんの話をルポ風にUPしたいと思います。
(ちょっと今までと作風が違います)
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65歳を向かえた摘田(つみた)さんが、おむすび屋を始めたのは、2006年5月。
家族の不安をよそに、知り合いの不動産屋から空き店舗の紹介を受けて、
東京メトロ大江戸線 東中野駅前に、ささやかな店を出すこととなったわけです。
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(↑東京の東中野は新宿からのアクセスが便利。
駅周辺居酒屋ではお笑い芸人に出会うこともあります)

おむすびは無添加無農薬。
螢やいなごの住む田んぼで育てられた米を炊きあげ、
15種類以上の具材には天然調味料を使用し、有機野菜にこだわります。

3坪程度(約畳6畳分)の小さな店舗には、
「ソルトン・ライス」という看板が掲げられております。
「米と塩(ソルト・イン・ライス)」から、お店の名前は名付けられました。
店内はカウンター形式になっており、テイクアウトも可能。
ランチメニューは、大きなおむすび2つとじゃっぱ汁。
あと、お新香と野菜がついて税込650円で、お得です。

「1日、3釜くらい炊きますね。何合かって?。
よくわからないけども、このお釜だと6キロくらいでしょうかね」


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東中野といえば・・・

痺れる程に感じるism(コダワリ)
同じ東中野に君臨する「ルーブル洋菓子店」もオススメ!
熟成ショーケースから始まるismが、好きなんです

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↑台湾にある故宮博物院の、豚の角煮を彷彿させ・・・
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↑サイキックなミックスサンド

今、なんとなく、はっぴいえんどの「風をあつめて」が聞きたくなりました

記事はこちらから

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「ソルトン・ライス」には、休日となれば朝8時くらいから、
朝ご飯を求める地元のお客がポツポツと立ち寄り始めます。
さながら、朝食のバゲットを買い求めるフランス人のようですね。
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(↑開店準備中にお客が訪れることも)

お客に感想を求めると、異口同音に言うことがあります。
「ホッとする」ということなのです。
摘田さんは「作り手として何よりも嬉しいことですが」と前置きをしながらも、
しみじみと語りました。

「老若男女、ホッとするという言葉には、様々な意味が入っているでしょうね。
ただ言えるのは、無条件でホッと一息つける。
リラックスというか、緊張が解けるということではないでしょうか。
ということであれば、その他の食物にはストレスを感じていることを意味します。
怖いのは、それに気がつかないことですよね」


昼時に来るお客で、中年の商社マンがいる。
海外にも飛び回り多忙の毎日ということなんですが、
「ここのおむすびを食べないと駄目なんだよ。
疲れたりうんざりすることも少なくない毎日だけど、
こちらのおむすびから、小さな幸せをもらった気がするもんでね」と語る。

そういえば、お客には常連が多いのか、
店主の摘田さんとにこやかな会話を交わす人も少なくない。
かと思えば、ランチのじゃっぱ(サンマや鮭を卸した後のひれ等)汁に感動したらしく、
若いサラリーマンが「じゃっぱ汁がほんとにおいしかったです。また寄らせていただきます」と感想を漏らす。
摘田さんはほんとに嬉しそうな笑みをこぼして、
「ありがとうございます。またお願いします」と返事を交わす。
サラリーマンは髪をかきあげたりしながら、ちょっと恥ずかしそうに目をシバシバさせて去って行きました。


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店主の摘田さんが無添加無農薬に目覚めたのは、今からおよそ40年前。
世間で癌が話題となり、「それを防ぐには体質である」という報道を耳にしてから。
その当時は、皆が今ほど添加物に対して敏感ではなかったようなのですが、
漠然と食の危険性を認識するようなったそうです。
やがて、「食べ物は自然な物を食べよう。
合成物とか添加物の入った食べ物を食べるのは止めよう」と思い立つものの、
栽培する時点で農薬が入っているため、避けようがない。
そこで自然と自分で食べ物を作り始めるようになったわけです。

お米は無添加無農薬米。水は、業務用の機械を使用し、
水道水の酸化を還元した還元水を使用。
海産物は、築地に直接買い付けに行く。調味料は、醤油以外は基本的に手作りであり、
味噌にいたっては30年近く自宅で作っている。ちなみに醤油については、
ヤマサの有機丸大豆吟選醤油を使用。
野菜は勿論、自家栽培の無農薬。例えば、ランチの付け合わせの蒸したインゲンは、
口に入れて噛みしめると身がプリッとしている。
そして種が口の中にツルッと滑り出してくるのだから、これはたまらない。

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(↑俵型のおむすび。左右に違う具材が入っており、
最後一緒になる。1個で3回の楽しみ方。オススメは鮭いくら、鮭納豆、納豆オクラ等)

無添加無農薬の自然食生活は、
摘田さんの40年近く続けてきたライフスタイルそのものだったのです。
先ほどのサラリーマンがおいしかったと漏らしたじゃっぱ汁は、
化学調味料や香料等を使わずに無添加に拘るため、
一杯を作るには途方もない時間と手間暇がかかる。
老後の楽しみや単なる好奇心で、毎朝このじゃっぱ汁は作れません。


「とにかくね、土台の認識がしっかりしていないといけないと思うんですよ」
物静かな摘田さんが確かな口調できっぱりと言い放った。
その時丁度摘田さんは、後ろ姿で食器を洗っておりまして、
狭い店内に、カチャカチャカタカタと食器が触れあう音だけが響きました。

「私はね、唯物論者なんですよ。どちらかというと無神論者です。
以前はね、自然食を作るときにも無味乾燥でしたよ。
でも、最近少し考えが変わってきたんです。
というか、変わらなければならなくなった、ということかな?。
その考えが、このおむすびを作る上での土台になっているんです」と語る。


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話は一気に哲学的になりました。
人間の遺伝子を研究してきた筑波大学名誉教授、村上和雄先生は、
ヒト・レニンの遺伝子情報を読みとって模型を作ったとき、
「これは決して偶然にできあがったものではない」と確信に似た感情を抱いたという。
人類には偉大なる力が働いているとしか考えられず、
これらを「サムシング・グレート」と名付け、多数の書籍に記されております。

「実は、このような感情は、多くの有名科学者達が何らかの形で感じているようですね。
この世の中、我々の知らないことの方がよっぽど多いということなんですよ。
我々の見えなくて感じないところで、何かが働いているかもしれないんです」と摘田さんは語る。

摘田さんは、やがて人間と魚、植物とか、境界線を引いていたのを止めて、
すべてに心があるのではないか?と思うようになったのです。
「最初は、心を込めて作るって抵抗ありましたよ。
人間だって自然の一部、極論から言えば石ころと同じだと思っていたわけですから」と語る。

そんな中、日本水田を守る会の役員さんと出会い、あることを言われたのです。
「現代の子供達には自然という発想が少ないです。
食べ物を収穫せずに買うことの出来る時代だからです。
だからこそ作り手として、『命を取り込んでいるんだ!』という認識を忘れないで欲しいんです。
我々が何億年かけた命を取り込んでいるという意識を忘れてはいけません。
殺して食べさせてもらっているんです」

この言葉がきっかけで、摘田さんは全ての食べ物に「真心」という気持ちを込めて作り始めました。
味噌を造る時も。野菜に水をあげる時も。おむすびを握る時も。
ある時は目の前で食べてくれるお客のことを思って、家族のことを思って、
そして元気に育った食べ物に感謝して。


おむすびを食べたお客の感想で「ホッとする」という言葉を思い出しました。
食べ物を頂くということは、作り手の気持ちを一緒に頂くということと同じ事だと思います。
真心を食べ物と一緒に頂くのですから、ホッと一息つけるのも納得できるような気がいたしました。

真心を食べてますか?

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